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会報
第42号
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日文生随筆

介護等体験記
3D 中山 望

夏の暑さを追いはらうかのように台風が都市をかけぬけた九月七日と八日、巣鴨にある東京中央ろう学校で介護等体験に参加しました。雨の巣鴨駅から、いつ襲うかもしれない突風に体を強ばらせながら歩くこと数十分。駅前の大通りから脇道にそれ、昔ながらの店が立ち並ぶ商店街の一画に中央ろう学校はあります。先生方からのガイダンスや聴覚障害についての講義や簡単な手話の講習。それまで「聴覚障害」というものに対して曖昧な知識しか持っていなかった私にとって、ここでの新しい発見や知識の獲得は自分の視野を広げる上でとても貴重な体験となりました。

その後、各クラスに分かれて実際に生徒と一緒に活動することになったわけですが、そこで私が強く印象に残ったのは、生徒たちの「優しさ」そして「強さ」です。中学生という多感な年頃、突然現れた手話も満足にできない大学生に、ものおじしない積極性で話しかけてきてくれたことが、何にも増して嬉しかったです。一言で「聴覚障害」と言っても程度はそれこそ十人十色。顔を見てゆっくり話せば会話できる子もいれば、発音が苦手でどうせいても聞き取ってあげられない子まで様々です。しかし、共通しているのは「伝わらないことを恐れない」ということでした。

「あの子は話すのが上手だけど、手話は得意じゃないんだよ。」
「あの子はここに来る前には普通の小学校にいたんだよ。」

どの子も自分なりに一生懸命に伝えようとしてくれたことがとても印象的でした。

さらに、仲間同士の思いやりや、自分より聞こえない子に対するさりげないフォローなど、言葉を十分に使いこなせない故に、場の空気を読むのに長けている点が、彼らを普通の中学生よりも少し大人びて感じさせました。背負うものの重さの違いなのかと思うと少し切ないけれど、自分の障害を受けとめ、生きる力を身につけ、明るくたくましく生きている姿は輝いていました。

ろう学校の中にいる分には彼らはマジョリティー、しかし、一歩外に出ればとたんにマイノリティーとなってしまうのは事実です。彼らの苦労や心理を身を持って感じることは無理かもしれませんが、理解するように歩み寄ることは可能だと思います。その初めの一歩として、今回はとても良い経験をさせていただいたと思います。

大学院生活について
博士前期課程二年 神山 瑞生

時々、学部の学生さんから「大学院ってどんなことをしているんですか」と聞かれます。一般に大学院というと、研究職の第一歩というイメージがありますが、具体的にどんなカリキュラム、生活形態なのかということはあまり知られていないようです。かく言う私も、大学院に入る前はそれがどんなものかわからず、ドキドキしながら四月を迎えたものです。ここでは、日本文学科の修士課程(本学では博士前期課程)のカリキュラムを中心に、大学院生活を簡単にご紹介したいと思います。時々、学部の学生さんから「大学院ってどんなことをしているんですか」と聞かれます。一般に大学院というと、研究職の第一歩というイメージがありますが、具体的にどんなカリキュラム、生活形態なのかということはあまり知られていないようです。かく言う私も、大学院に入る前はそれがどんなものかわからず、ドキドキしながら四月を迎えたものです。ここでは、日本文学科の修士課程(本学では博士前期課程)のカリキュラムを中心に、大学院生活を簡単にご紹介したいと思います。

本学の博士前期課程のカリキュラムは、それだけ見るといたってシンプルです。標準二年、長くて四年の修業年限のうちに、修了要件単位(日文では三〇単位)を取得し、修士論文の審査に合格すること。基本はこれだけです。つまり、大学院用に設けられた授業を八コマ以上取り、自分の研究論文を書き上げることが修了要件な訳です。もちろん、その論文が担当教官をはじめとした教授陣の審査で認められれば、の話ですが。

このように大学院の授業コマ数はけっして多くはありません。というのも、大学院での第一優先事項は、自分の研究を行いそれを論文という形に残すという事だからです。ただし、その授業は多くの場合演習形式になります。つまり、年に三〜五コマの演習を取ることになりますから、演習の発表が一週間で二つ、三つ重なるということも少なくありません。しかも、この間にも自分の研究を進めなければならないので、実際、二年で論文を書き上げるとなると、普通に生活していてもかなりの忙しさになります。

こうした毎日の合間に、多くの院生は研究会や学会に参加したり、自分の研究論文を投稿したりして、研究者への道を進んでいきます。もちろん、研究職への道は狭く、続けていくにも相当の覚悟とタフさが必要です。しかし、それでも自分の好きなことを職に出来る喜びは何ものにも代えがたいものがあります。文学研究の世界を志す方は、是非一度その門をたたいてみてください。

教育実習で気を付けたこと
4D 嘉村 雅江

私は、高校一年生四クラスの教科と、その内一クラスの学級を担当させて頂きました。二週間の教育実習の中で、私が気をつけたことは次の二点です。

第一に、出来る限り先生方や生徒と接することです。教育実習は思った以上に時間がありませんでした。授業準備、丸付け、他校務などを頂いて、これらをすべて七時の完全下校までにやりきると、とても生徒と会話をしたり先生方からアドバイスを頂くことなど出来ません。私は、自宅で出来る授業準備は全て夜間に終わらせ、持ち出せない校務などは空き時間と早朝に片付けるようにし、昼休みや放課後は出来る限り生徒と会話をするよう心がけました。また先生方の空き時間には、教務室でお話を伺い参考にさせていただきました。このことは、生徒が授業に求めていることや、先生方が何に気をつけて授業を進めているかを知る機会になり、また単純に生徒と仲良くなるきっかけとなりました。

第二に、「面白い授業」をするように心がけることです。これはお世話になった先生にお話を伺った際に、「自分が皆と同じ年齢だとして、分り易く興味深い授業をするようにしている。それが面白い授業だ。」との言葉を頂いてから心がけたことです。実習初日から教壇に立たせて頂き、どう授業を進めていいか分らなかった私は、この言葉に勇気を貰いました。まず、教材研究を徹底し、それをもとに「文法などで抑えておくべき事柄」と「本格的に古典を学び始めた生徒が、興味を持って古典の世界になじめる事柄」を中心に、一時間毎の流れを組み立てました。ただ、私が失敗したことは、「わかりやすい伝え方」と「深い内容」を欲張ったために、時間が足りなくなってしまったことです。

ある日、担当して下さっていた先生が、私にあるものを見せてくれました。それは、私が学級を担当していないクラスの学級日誌でした。「古典の実習生の授業、すごくおもしろい!」

教育実習は、自分が頑張れば頑張るだけ絶対に報われます。これから実習に行かれる皆さんも、是非培ってきたことを出し切って頑張ってきて下さい。

就活について
4D 松本 千春

私は、大学三年生の秋から就職活動を始めました。九月頃から、大学の就職課で行われるガイダンスに参加し、筆記テストの対策や自己分析を始め、一月から三月にかけては、企業の説明会やエントリーシートの提出、四月からは筆記試験や面接などの選考、という流れで就職活動を進めていきました。そして、八月に第一志望だった企業から内定を頂き、就職活動を終えました。

就職活動を始めたばかりの頃は、ただ漠然としか自分のやりたいことが見つかっていませんでしたし、多くの可能性の中から自分のやりたい仕事を見つけたいと考えていたので、業種、職種にはあまりこだわらず、なるべく多くの企業にエントリーし、説明会に参加しました。最初から業界を絞るのではなく、さまざまな企業を自分の目で見ることで、自分が本当に興味を持てる仕事を見つけることが大切だと思います。私は最終的に、全く興味のなかった金融業界に興味を持ち、志望するようになりました。

私が就職活動の中で最も苦労したのは面接でした。最初は失敗の連続で、なかなか内定がもらえずに辛い思いもしましたが、面接を振り返り、何が悪かったのかを見つめ直すことで次の面接につなげていきました。そこで、面接では、自分自身をよく知ることが大切だということに気づきました。面接では自分に関する質問が多いので、自分自身をもう一度見直すことで、自信を持って面接に臨めるようになりました。

五月中旬にようやく一つの企業から内定を頂き、就職活動をやめることも考えましたが、じっくり考えた結果、妥協している部分があることに気づき、就職活動を続けました。自分が納得できるまで諦めずに続けた結果、八月に第一志望だった生命保険会社から内定をいただくことが出来ました。

就職活動は精神的・体力的に辛いこともたくさんありましたが、自分や社会を知ることが出来る、またとない機会です。また、諦めずに最後までやり抜くことでプラスとなるものをたくさん得ることが出来たと思います。

皆さんの就職活動も実り多いものになることを祈っています。

財布に潜む可能性
3C 伊藤 かおり

「学生証は魔法の紙切れ」

そう言われたのは一年生の四月のことでした。
学生証があって、アポを取れば、大概の大学の教授は会ってくれる。当時は半信半疑であったその言葉も今は確信に変わっています。大学生であることで私の可能性は随分と広がりました。文化人類学の先生に「スワヒリ語について教えてほしい。」と聞きにいけば、「じゃあ来週から一緒に勉強しましょう」ということになったり、他大の授業を聴講させてもらいに行けば、(こともあろうに)演習のグループ発表に組み込んでいただけたり、部合宿で見に行った講演会がきっかけでプロの狂言師に稽古をつけていただくなど、自分でもびっくりするような機会を得ることが出来ました。なけなしの勇気を出して踏み出した一歩のはずが、流れるように十歩になる、あり得ない事態を可能にさせるのがこの「魔法の紙切れ」です。歌舞伎や能、映画にバレエなどといった観劇料金はもちろんのこと、私たちが思っているよりずっと、世間の大人たちは学ぶ意欲のある学生に対してとても親切です。そして、私たちは若さゆえに「許されている」だけでなく、多くのチャンスをも与えられています。

つい先日、動物行動学者ジェーン・グドール博士の講演会に行ってきました。講演会の第二部では他大学のボランティア団体が活動報告をしていました。法学部の二年生がゆっくりながらも素敵な発音の英語で発表をし、博士の前で自分たちが作成した英字幕つき映像を流しているのを見て、「こういう選択もあったな。」と目を細めました。私も自分なりに学生生活を駆け抜けてきましたが、彼らのような過ごし方は「個人ではできない大きなこと」への可能性に満ちています。私たちは日々、チャンスこそ与えられていますが、そのチャンスをどのように利用し、何を選び取っていくかは各々の判断と技量に委ねられているのです。

二年半前、恩師にいただいたあの言葉は、そういう自由や自分たちの手の中にある可能性に「気がつきなさい」ということだったのかもしれません。

私の留学生活
1B コウ シュ

「自分の国を飛び出して世界に触れてみたい」という夢で、留学を選んだ人は少なくないと思います。留学している国の言葉を学ぶだけではなく、様々な国の友達を作って有意義な留学生活を送りたいという希望を胸に留学してきた人も多いのですが、留学は、そんなに甘いものではありません。単身で海外にいるのは、老若男女を問わず、慣れない異国での生活、多様な困難からストレスを抱えたり、やる気がなくなったりすることも多く、大変なのです。覚悟ができているとしても、何でも大丈夫、うまくやっていける人はあまりいないと思います。何と言っても、夢と現実は違うのです。これが、私が身をもって感じていることです。

もちろん、私も自分の平凡な人生を変え、素晴らしい人生を送りたいという思いで、日本に来ました。しかし、最初のドキドキした新鮮な時期を過ぎると、言葉が通じない、友達がいない、生活習慣が違うなどのことをどんどん感じるようになってきました。

まず、うまく話せないのは惨めで辛いことだと気がつきました。ついつい日本語で話す場ではおとなしくなって、相手の話を聞くばかりになってしまいます。特に大学に入ってから、周りは日本人ばかりの環境の中で、口も開きたくないほど自分の変な日本語が恥ずかしく感じています。それでも、結構頑張って、皆と話したりしてみましたが、なぜか周囲に溶け込めないと感じています。勉強したいから、大学に入ったわけですが、頑張ろうとしても、自分の生活は大変、アルバイトは忙しい、体調は悪いなどで、なかなかうまくいかず、勉強を最後までやり遂げる自信がなくなってきて不安になったり、留学の夢が崩れていくようでイライラしたり、淋しさの連続でもあります。

しかし、ここで反省して、考えなければいけないのは、「留学の意味」です。何かを学び成長したい、視野を広げたい、人生を変えたいなどの目標を持って来たはずです。留学は自分で選んだ道、目的を持って来たのに、ぐずぐず愚痴をこぼすなんて! 日本に来ていなかったら、今のように勉強することはなかっただろうし、何よりも今の自分はいません。留学して得るもの、留学を踏み台にして大きく羽ばたき、その後に自分が手に入れるものによって、自分の努力や苦労は報われるのです。その前には、いくつもの障害物…山、海また悪天候などがあり、それらをクリアするためには回り道や徒歩でしか進めないこともあります。嵐の日にはただそれが過ぎるのを待つしかない時もあります。障害物や嵐の真ん中で、「ああもうだめだ、やっぱり自分には無理」と諦めて戻るか、それとももう一度やり直すか、真剣に考えなければなりません。夢を実現する途中での失敗、挫折、敗北は一時的なものです。倒れたらまた起き上がって進めばいいのです。ボロボロになっても失敗しても、また立ち上がって目的に向かって進み、そこに到達していくのが本当の人生だと思います。こんなふうに、自らを励まし、奮闘しているのが私の留学生活です。


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