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会報
第45号
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卒業生紹介

アートと音楽と文学が出会う場所
長尾 文子

 私は現在、地元岡山でギャラリーを経営しています。美術作品を展示して一般の方々に見ていただくという点では美術館と同じですが、ギャラリーと美術館の最も異なるところは、展示している作品を販売することにあります。
 「絵画を販売する」というと警戒される方もいらっしゃるのですが、ギャラリストの仕事は無理矢理に作品を売りつけることではありません。作品を発表する場を設けることで、ご来場いただく方に少しでも作家や作品について知っていただき、ひいては日本の美術界を背負っていけるような若手の作家を育てていくことにあります。当画廊では特に若手の現代アート作品を取り扱うことが多いのですが、敬遠されやすい現代アートに親しんでいただくことも目的の一つです。
 こういった仕事は美術を専門に学んだ人間でないと出来ないのではないか。勤め始めた当初は私もそう思っていました。
 実際、私は大学4年間に加えて大学院で3年間、中古文学、特に『源氏物語』を専門に学んでいました。『源氏物語』が就活や仕事に何の役に立つのだろうか、そんな不安を抱えて勉強を続けている学生さんも大勢いらっしゃると思います。確かに、専門職のように直接的に役に立つという学問ではないかもしれません。しかし大量の論文を読み、その中から必要な情報を取捨選択し、論理的に思考して分かりやすく他者に持論を伝えたり、本文を細部まで読み込んで表現の美しさや構造の複雑さを捉え直したりする作業というのは、どんな仕事にもそのまま生かせるのではないでしょうか。
 「アートと音楽と文学が出会う場所」と銘打った当ギャラリーは、現在でこそアート作品の展示が多いですが、音楽会や演劇、朗読会など文化に関することなら何でも企画します。そのための企画書や、展覧会のPRのための文章を作ったりする場面では、在学中に身に付いたそうしたスキルが大変役立ちます。
 また、何より大切なのは信頼できる人間関係を築いていくことにあります。書道展の際に流麗な筆致の李白の漢詩について作家と語り合ったり、平安時代をモチーフにした作品展について来場者と話題を共有したり出来るということは、双方と信頼関係を築くことに繋がり、接客という面においても私は大変恩恵を受けています。その場に適切な言葉と話題を選び、何より自分も楽しんで人と関わっていく。文学を研究するということは、ひいては人間そのものを勉強することに繋がっていくのではないかと思います。在学生の皆さん、どうか自信を持ってたくさん本を読んでたくさん勉強してください。そうして身に付いたスキルや習慣は、一生の財産になるはずです。
(二〇〇四年度卒業)


「学ぶ楽しさ」を伝えられるのは、自分でそれを感じた人だけ
井手 敦大

 私は今、東京都公立学校の非常勤講師として働いています。板橋区の区立中学校の2校で国語の授業を、月〜木曜までで合計13時間担当しています。
 また今までの経験を生かし、サッカー部のコーチとしても生徒と関わっています。
 いずれは非常勤でなく常勤の教員として働きたいと考えていますが、教科の指導に対して多くの時間をかけられる今の立場にも、楽しさとやりがいを大いに感じる毎日です。
 さて、お仕事の内容紹介として、よく生徒たちが質問するパターンを書いてみましょう。
 「どうして〜なんか勉強しなきゃいけないの?」
 先日も「古典」についてそう聞かれました。『平家物語』の授業中でした。
 色々な理由が思い浮かびます。語学のため? 日本の文化を知るため? 受験のため?
──それを教師が考えて一方的に押しつけることは、意外と簡単なのです。生徒にとって教師は強い存在ですから。でも、私はそこで教師は「生徒と一緒に考える」べきだと思います。自分で「学ぶ意味から考える楽しさ」を、大学でたくさん経験したからこそ、そう思うようになりました。大学のいいところは、「何を学ぶか」ということを自分で考えられるところだと思います。講義はもちろん、ゼミでの話し合いや、ときには夜遅くまで研究室に残って仲間とそんな議論したこともありました。そんな経験が、先にあげた生徒の質問に答えるヒントになったりしています。
 在学生のみなさんの中には、学校で働きたいと考えている人はたくさんいらっしゃると思います。「先生」はとっても大変な職業ですが、その仕事にはそれだけの見返りもあります。自分が成長するのと同じくらい、自分の生徒が成長するのは嬉しいものです。そのためにも、自身の学びのために100パーセントの力を使える「学生」のうちに多くのことを学び、考えてください。生徒に「学ぶ楽しさ」を伝えることができるのは、自分でその楽しさを感じた人だけだと私は思います。
 最後になりますが、私が教育の現場を見た感想があります。一番の問題は「教員が足りない」ということです。学校は多くの教員を本当に求めています。しかも、教育現場の実態を知り、すでに指導力を身につけた「即戦力」といわれるような人たちを。これは採用試験でも特に重要視されているところです。まだ実際に教壇に立つことのできない学生でも、「学校ボランティア」・「学習支援員」などと呼ばれる立場で学校と関わる機会が沢山あります。そういった場を通して、自分の教師としてのスキルを身につけておくことは、「必須」だと思います。また教員を目指すことを迷っている人も、一度学校を見ることで自分の夢を再確認してみてもいいかもしれませんね。
(二〇〇九年度卒業)


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