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会報
第43号
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日本文学科夏期集中講座
講師:坂手 洋二氏

今回の夏季特別講義は9月9日から12日の4日間、坂手洋二先生を招いて演劇について学びました。
講師の坂手先生は、劇作家で劇団「燐光群」を主催しています。1991年に「ブレスレス」で岸田國士戯曲賞受賞後、「屋根裏」他で読売演劇大賞最優秀演出家賞、紀伊國屋演劇賞を、「だるまさんがころんだ」では鶴屋南北戯曲賞、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞選考委員特別賞を受賞、というように数々の賞を受賞されており、国際的に活躍されている著名な方です。
1日目は坂手先生が飛行機の都合で遅れるということで、特別講師の加納さんと佐藤さんという2人の役者さんに来ていただきました。なんと佐藤さんは佐藤泉先生のお姉さんだそうです。 最初は体を解す、ということで全員で輪になり頭と体を使った簡単なゲームを行いました。ジャンケンゲームやピンポンパンゲーム、椅子取りゲームなど本物の役者さん達も実際にウォーミングアップとして行うゲームで、頭で考えていることと違ったように体を動かすことの難しさ、他人の行動を予測して動くことの難しさを体験することが出来ました。
坂手先生が到着した後は、先生の自己紹介、そして自分達の自己紹介を行い1日目は終了しました。
2日目は演劇、特に戯曲に特化した講義が行われました。「演劇とは何か」から始まり、戯曲とは何か、そしてどんなものも戯曲に成り得るという例で、海外の舞台であり坂手先生が日本でリメイクした「CVR」について、更には日本の演劇や映画についての歴史を世阿弥の時代から60年代、70年代、80年代そして現代に至るまで、先生の体験談も交えてお話していただきました。
3日目の前半は劇場や舞台美術のことを、実際の劇場を多く例に出して講義を行っていただきました。後半は事前に1人につき1つずつ集めていた「名台詞」と「固有名詞」を使ってグループで戯曲を作り、読みながら演じるという授業を行いました。40弱ある名台詞の中から20個以上、固有名詞は幾つでも使用できるが、それ以外の言葉は使ってはいけない、という制限の中戯曲を考えます。名台詞集は本当に真面目なものから「うーん、ミニモニ」や「いいえ、ケフィアです」といったようなふざけたものまで色々あり、最初は全く完成が見えなくて呆然としました。しかし制作の時間制限もあり、皆でどんどんアイディアを出していく内に様々なストーリーや展開が見えてきて、発表になるとどの班も白熱した演技を披露し、9班全て異なったストーリーを誕生させたことに驚き、正にどんなものでも戯曲になるということを体感させられました。
最終日は事前に課題として出されていた舞台の感想文を持ち寄り授業が行われました。2人1組になり、自分が見た舞台がどのようなものかとそれを観た感想・感動を相手に伝え、それを相手が自分が見てきたものとして皆に紹介する、といったものです。簡単にストーリーを説明することは出来るのですが、何処がどのように感動したのかを伝えることが大変難しく、伝えたつもりでも相手は必ずしも自分の意図通りに話を受け取っていないということを知ることが出来ました。また同じ舞台を見た人でもその感想の抱き方は全く違い、とても面白かったです。
この4日間、演劇界の最前線で活躍されている先生から講義を受け演劇の歴史や奥深さを知ることが出来て、今までよりも更に演劇が好きになりました。今回の経験によって、これから先演劇の観方ががらっと変わると思います。

3年C組 広野 咲子
(講義名・現代演劇を知る)


講師:高田信敬先生

「書誌学は嘘を見抜ける」と高田信敬先生は最初の授業でおっしゃいました。
書誌学というのは事実認定から考証、実証していく学問であり、実物を触り見ていくものだから嘘のものは見抜けてしまうそうです。
授業は研究の仕方から始まり、明晰な情報から自分の問題を出すことが大事であるとおっしゃり、実際に『源氏物語』の龍眼樹(さかき)についてのいくつかの論と山田孝雄さんの論を見比べて実証と事実の大切さを述べられました。そして古典の書物の形、料紙についての説明、装丁の差や見分け方、絵入り本の色彩について、印刷の仕方、鑑識のやりかた、古筆切(こひつぎれ)の見極め方、木版か銅版かの見極め方、版字の相違、日中の書物の相違、色彩のこと等、書誌学の基礎から始まって、本当に自分で見極めることがある程度できるくらいまでの授業でした。 受講生が少なかったので、実物を先生が見せてくださり、実際に触れてその質感やそれらが書写された時代の背景などが理解でき、大変有益な授業でした。先生ご所蔵のヴィクトリア朝の絵入り本、草双紙の写本や教典や、技法を凝らした表紙をつけた写本や、ガイドブックとして私用に使われた写本を見せていただいたり、また古筆切の一部のポストカードや実物の書物の一部をいただいたりしました。このように、毎日のように写本を見せていただき触らせていただきました。
私は今まで書誌学というものは一年の時に習い、卒論で扱ってきましたが、実際に触り実際に見て考察するということはあまりやってこなかったので、大変興味深いものでした。
書物の中だけにとらわれていて装丁という大事なところを見落としがちですが、基本的な部分であり、本の価値を決める大事な部分であると再認識させられました。
書誌学というと堅苦しい雰囲気があり、何をしているのか不明な学問と思われがちですが、書物を扱う以上、基本中の基本だと捉えるようになりました。色彩の配色、紙の質、装丁の形と、どれをとっても重要です。日本の書物と中国や朝鮮の書物は違いますし、字体も時代により変化していきます。書誌学は常に変化しつつ進歩していく学問であることを学びました。 高田先生はよく授業中に、「知識がないと学問はできないし、正しい物も選べない」とおっしゃっていましたが、知識がないと正しい物かどうか見極められないということ、知識が重要であることを認識させられました。
何の変哲もない古書でも、長い歴史の中を渡りその当時の人々の思想を運ぶものですから、これからも後世に残したいものです。古書なればこその魅力があり、それらの持つ意味を再認識していくと、文学というものも奥深くまで追求して行けると思います。

4年A組 小見山明子
(講義名・文献調査の基礎技術とその意味─書誌学の話─)

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