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会報
第41号
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青山学院大学文学部
『日本文学科創設四〇周年を祝う会』
2B 久我徳子

二〇〇六年九月二十三日、青山キャンパスにて、青山学院大学文学部日本文学科創設四〇周年祝賀会が行われました。

記念式典
(於・総研ビル大会議場)
  式典は日本文学科の卒業生主体で進行され、祈祷では、マタイによる福音書五章、本校のスクール・モットーである「地の塩、世の光」の箇所が取り上げられて、日文科卒業生が社会の中でかけがえの無い役割を担えるよう、厳粛に祈りを捧げました。

  続いて、学長の武藤元昭先生と学科主任の廣木一人先生の御挨拶があり、武藤先生からは、日文四〇年の歴史について、また、廣木先生からは、現在五年計画で進行中の〈日本文学科主催・国際シンポジウム〉についてのお話がそれぞれあり、日本文学科生が今後ますます国際的な視野を身に付けることの必要性が語られました。

  引き続き、多くの方から寄せられた祝電が披露され、片山宏行先生による閉式の辞で、記念式典は幕を閉じました。

記念講演
  小休憩を挟み、引き続き同会場に一般参加の方々もお迎えして、記念講演が行われました。

  まず最初に、日本文学科教授佐伯眞一先生による「武士道幻想とエデンの園」の講演がありました。

  武士道というと、山本常朝の『葉隠』や新渡戸稲造の『武士道』、また最近では映画の影響もあり、私達は、武士道に対して「正々堂々」「フェアプレー」という印象を持ちがちです。

  しかし先生は、『平家物語』の「越中前司盛俊被討事」を一例として、私達の抱いている「武士道」イメージが、ひとつの幻想であることを指摘なさいました。

  実際に『平家物語』を読んでみると、戦場ではだまし討ちも珍しくなかったということが分かってきます。先生はその理由を、戦国の世では勝つことが名誉であり、一番重要なこととして捉えられていたからだと解説されました。「武士道」という言葉の発生を調べると、時代によって指し示す内容が全く違い、だまし討ちや虚言をどう捉えるかも、その時々の状況や立場によって随分異っていたようです。そこで先生は、江戸時代までの武士道を、実践的で策謀的な「武士道」と、ロマン的・道徳的で本来の武士道からは異端である「葉隠」的な武士道、また、儒教の影響が強い模範的・社会的な「士道」の三つに分類されました。その後も「武士道」は変化を続け、明治期になると、西洋的近代に対抗する伝統・復古としての「武士道」が登場しますが、新渡戸のこの『武士道』も、元々は西洋人に日本の道徳観念を説明する為に書かれたものであり、西洋を意識したものであったということです。

  このように、日本独自の伝統や、西洋に比肩する日本独自の精神文化の伝統を求める心情が「武士道」への幻想を生んだと考えられます。最後に先生は『日本中世史』が、素朴な理想郷として東国武士の世界を描いていることを挙げられました。これは歴史学という「論理」の中に、無意識に幻想が入り込んでいるという状態を指しています。先生は「平家物語」には、当時の武士たちの純粋さだけでなく、罪深さや残酷さも描かれており、過去に現代人が思い描いているような「楽園」があった訳ではないと指摘されました。

  このように、論理の中に潜んでいる「幻想」を察知する為には、物事を様々な角度から見て、相対化する力を身に付けることが必要であるということ、また、日本文学研究は「誇るべき文化伝統」を伝える力を持つものであるとして佐伯先生の御講演は終了しました。

  次に、廣木ゼミ卒業生でもある、観世流能楽師の坂井音隆さんによる「能の魅力」の講演が行われました。内容は、廣木先生が聞き手となっての能についての基本的な解説、そして「葵上」を略式で実演してくださるという、日本文学科ならではの貴重なものでした。

  坂井さんは観世流坂井家の三代目で、三歳の時、「鞍馬天狗」の子方で初舞台を迎えたというベテランでいらっしゃいます。

  謡の実際として、配布された「葵上」の謡本を例に、謡本を見るだけでは違いが分かりにくい、感情を込める部分を、特に強調して発声してくださるなど、分かりやすく解説してくださいました。

  能の特徴である「カマエ」「ハコビ」についても、実演を含めつつ解説され、公家の御佇まいを意識されていることなども、目で見て実感することが出来ました。

  能面の説明では、数種類の能面を披露され、一見、似たような能面でも、表情に微妙な違いがあることにがよく分かりました。

  続いて、本来であれば静寂のうちに行われる「装束付」を、今回は特別に舞台上で廣木先生との実況解説を交えながら拝見することができました。数人がかりで衣装を着せる段取りや、間近に見る衣装には、新鮮な驚きを感じました。

  そして、「葵上」の実演。舞台を最大限に使った、大胆な動きのある演目で、足拍子などの激しい動きは、舞台との距離が間近なだけに迫力がありました。

祝賀懇親会
(於・青学会館2階ミルトス)
  午後六時より「日本文学科創設四〇周年祝賀懇親会」が行われました。元日本文学科教授糸賀きみ江先生が乾杯の音頭をとられ、和やかに会は開始されました。

  新旧教員と卒業生たちの懇談の時は楽しくにぎやかに進み、宴もたけなわとなるころ、松澤建学院理事長、深町信行院長、武藤元昭学長からのご祝辞を賜り、その後はさまざまなアトラクションや、カレッジソングの斉唱、そして応援団からの日本文学科へのエールが送られて、会場は大いに盛り上がりました。

  予定の時間はまたたくまに過ぎ、最後に、「祝う会」の実行委員長を務められた日本文学科同窓会会長の戸田正彦さんによるご挨拶をもって、記念すべき「日本文学科創設四〇周年を祝う会」は盛況のうちにその幕を閉じました。

  講演会から懇親会まで、この日の参加者は、延べ五四〇余名を数えました。

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