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図書紹介 翻 訳

モリエール全集(全10巻)

モリエール全集(全10巻)R. ギシュメール・広田 昌義・秋山 伸子共編
(臨川書店 2000 年 4月〜 2003 年 3月刊)
※第10回日仏翻訳文学賞受賞

作品はすべて新訳で、翻訳の多くは新進気鋭のモリエール研究者、秋山伸子の手になるものである。訳者が若い研究者だけに、今の若い読者向けにわかりやすい訳文で、作品の題名も新しくなっている。第1巻の冒頭に、詩句の一部をモリエールが書いたとされる『相容れないものたちのバレエ』を置いているが、そこにこの全集の重要な意図が現れている。秋山が示しているように、コメディ=バレエの登場人物や構造はバレエ抜きの劇作品にも大きな関連性を持っている(第7巻所収の論考「モリエールのコメディ=バレエと他作品の関係」を参照)。

フランスでの博士論文のテーマがコメディ = バレエだった訳者としてはこのバレエ台本も欠かせなかったのであり、これこそが本全集の特色である。日本ではモリエールの喜劇は、ともするとその社会風刺だけが強調されがちだったが、このように彼のコメディ=バレエの側面が多彩に翻訳され、仏伊の研究者による笑劇的側面の解明が紹介され、新たな読解が示されると、より一層モリエール喜劇の多面性、多彩さが理解されることになるだろう。(伊藤 洋・『悲劇喜劇』2001年12月号より)

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