西洋史コース

西洋史コース

みなさんは「西洋」と聞くと、どんな地域を思い浮かべますか。多くの人は、西洋=ヨーロッパと答えるかもしれません。では、アメリカ合衆国をはじめとする南北アメリカ大陸の国々は西洋ではないのでしょうか。あるいは、オーストラリアやニュージーランドはどうなるのでしょう。江戸時代の出島は西洋とは呼べないのでしょうか。西洋という地理的用語がこのように定義しにくいことの背景には、実は長期にわたる歴史的変化が横たわっているのです。

古代の四大文明発祥地から遠く離れた周縁的な地域にすぎなかったヨーロッパは、メソポタミアやエジプトといった先進地域から様々な知識・技術を吸収することで古代ギリシアやローマといった独自の文明を築き上げました。しかし、ローマ帝国崩壊後は、イスラーム文明の影に脅かされるようになります。そうしたなか、キリスト教を基盤とした中世社会を生み出し、さらにはイスラーム勢力の優位を突き崩すべく大西洋へと乗り出し、アメリカ大陸に進出するとともに、インド洋に到達するルートを確立します。

アフリカやアジア世界との直接交渉に乗り出した当初、ヨーロッパ諸国はかならずしも軍事的・政治的・経済的優位には立っていませんでした。ただ彼らには、大洋を征服するのに必要な航海技術がありました。それを駆使することでヨーロッパ諸国は、大西洋と太平洋、インド洋とを結ぶ、地球規模のネットワークを張り巡らせていくのです。このネットワークを通じ、スペイン領アメリカ植民地で産出された銀がヨーロッパを経由してアジアへと流れ、アジアからは絹織物や陶磁器といった産品がヨーロッパにもたらされ、アフリカからは奴隷がアメリカ大陸へと強制移住させられました。

18世紀後半の産業革命は、ヨーロッパ諸国のアジア・アフリカ地域に対する経済的優位を決定的なものとし、地球上の広大な地域を軍事的に征服し、政治的に支配することを可能にしていきます。いわゆる帝国主義の時代です。

南北アメリカ大陸やオーストラリア、ニュージーランドといった地域は、当然のことながらヨーロッパの外部に広がっています。けれども、1492年以降、ヨーロッパ諸国を起点として展開されるグローバル・ネットワークに組み込まれることにより、西洋世界の一部となっていくのです。他方で、いったんヨーロッパ諸国の植民地となったからといって、すべての地域が永遠に西洋世界の一部であり続けるわけではありません。そのことは、第二次世界大戦後のアジア・アフリカ諸国の独立からも明らかでしょう。

西洋史コースでは、古代ギリシア・ローマ世界から中世社会、大航海時代のスペイン・ポルトガルからイギリス帝国の興亡、さらには近現代ドイツまで、多様なテーマを専攻する専任教員のほか、わたしたち専任教員ではカヴァーしきれない時代・地域・テーマを研究している方々による講義や演習をそろえることで、このように複雑な過程を辿ってきた「西洋」の歴史を、みなさんとともに考え直していくことを目指しているのです。