HOME > 学科紹介 > 教員・ゼミ紹介 > 西澤文昭 前のページへ戻る
 
ゼミの方針

青山学院大学にフランス中世文学の専門家として赴任したときから、フランス文学科の文学分野には中世から現代までをカバーするスタッフが揃ったということになる。とはいえ、中世専門家という名前はいただいたものの、18世紀や19世紀には複数の専門家がいるというのに、控えめに言って5世紀にまたがる時代を引受けるなどということはおよそ不可能なことだった。それに、僕自身は14、15世紀の定型詩の研究から始めたので、それ以前の時代の作品についてはまだ乏しい知識しか持っていなかった。 はじめはフランソワ・ヴィヨン(15世紀半ば)やその周辺をうろうろし、そのうち院生時代に習った、ベルールの『トリスタン』を数年かけて読み、ときどきファブリオーを挟みながら、徐々に中世の大作品に取りかかっていった。テキストとして『ローランの歌』を選んでようやく500年が見通しよくなったと感じたものだ。それからは『狐物語』、『パリの家長日記』、リュトブフ、そしてマショー、デシャンに始まる定型詩作品などを数年単位で読んできた。教えながら学ぶとはまさに僕のような人間のことではないかと思う。そして、ようやく数年前から「中世最大の詩人」と称されるクレチアン・ド・トロワに集中している。 中世文学の手引きをしてくださった先生が、クレチアンは「もしかしたら偉大なる凡人なのかも」と漏らしていたことが思い出されるが、まだ僕にはその真偽のほどは明らかでない。いつになったらわかるのか見当もつかない。「我、一学徒也」とヴィヨンは言ったが、生涯、学徒の気持ちで終えるのも奇特なことかも知れないと思う。

 
 
 
(C)2003-2004 Aoyama Gakuin University