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自己紹介

東京生まれ。専門は、百科全書派の作家ディドロを中心とする十八世紀フランス思想。

 
ゼミの紹介

十八世紀が啓蒙の世紀あるいは哲学の世紀と呼ばれることからも分かるように、モンテスキュー、ヴォルテール、ルソー、ディドロといったいわゆる啓蒙思想家(フィロゾーフ)が哲学者として時代の言論をリードしつつ小説家、詩人、劇作家などの文学者としても活躍した十八世紀フランスの文学テクストは、ジャンルを問わず思想的・哲学的な傾向を強く持っています。ゼミでは、文学という言葉から一般にイメージされる小説や詩を中心とした文化的な制度としての近代文学が未だ成立しない一方で、「自由」や「個性」など、現在では常識とされる様々な概念やものの考え方が創造された近代のルーツともいうべき十八世紀フランスの文学テクストを題材に、テクストの何気ない言葉に隠されたある概念の歴史的な意味や思想史的な背景などを読み解く作業に取り組んでいます。十八世紀のフランス語は文法・語彙の面で現代のフランス語と極端に異ならないので字面だけなら読めたような気になれますが、「身体」や「精神」など当たり前に使われる一見簡単な単語であればあるほど、哲学的な議論や思想の流れをある程度押さえないと理解できないこの時代独特の意味を持っていることが多く、一筋縄ではいきません。ですが、十八世紀フランス語の文章の読解を通じて、日頃その意味について深く考えることなく自分達が使っている言葉や概念の歴史的なルーツへと遡り、キリスト教の枠組みを中心とした当時の人々の世界観やものの考え方を知ることは、明治期以降、近代ヨーロッパ文明を輸入し西欧化を進めた私達日本人にとっても興味深い体験のはずです。

 
学生の声

授業は、ディドロ作品の精読を中心に進むが、通り一遍の訳読作業にとどまらないのがこのゼミの面白いところだ。というのも、先生はあらゆる所で時間の赦す限り〈何か面白いこと〉を語ってくれるからだ。井田ゼミ最大の特徴であり最大の魅力がここにある。われら生徒は、先生の言葉に耳を傾けるだけ で、 しらずしらずのうちに広大無辺な知の厳粛な綱渡りをしている仕組みになっているのだ 。

ディドロからソクラテス、ソクラテスから熊楠、熊楠から鴎外、鴎外から清張。また、ディドロからラモー、ラモーからピタゴラス、ピタゴラスからデカルト、デカルトからビュフォン。また、……訳読の授業の合間を縫ってこんな綱渡りが行われてゆく。これらは、昨年実際に先生の口から発せられた名前だが、こんなものは勿論ごく一部に過ぎない。先生の知の泉は涸れることをしらず、話は延々と広がってゆく一方なのだ。一体どんな脳をもっているのかしらと訝りながらも、ぼくは本当に沢山のことを教わった 。

また、時々行われるコンパも、とても楽しいものだ。アルコールが入れば、先生の脳はフル回転。哲学、文学、美術、音楽、サブカルチャー、さらにはスポーツに至る迄、綺羅星の如く居並ぶ話題は尽きぬ。まさに生ける『百科全書』、なんでもこいだ!

最後に、こんな素敵な井田ゼミを要約して C'est l'élégance de l'homme moderne! とでもいっておこう。

 
 
(C)2003-2004 Aoyama Gakuin University