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「歴史の醍醐味を知ると、人生がもっと面白くなる」

出光美術館学芸員
史学科卒
金沢 陽さん

幼い頃に出会った1冊の本をきっかけに、歴史の持つ壮大なスケールにひかれていった金沢さんは、出光美術館の学芸員となった今でも、ひたすら歴史の醍醐味を追い求め続けている。歴史を研究することの面白さを語ってくれた金沢さんからは、自分の好きなことを仕事にしている喜びが感じられた。

-歴史に興味を持ったのはいつ頃ですか

金沢 今でもはっきりと覚えていますが、小学生の頃に読んだ少年少女文学全集の「三国志物語」がきっかけです。英雄豪傑の物語、いわゆるチャンバラが単純に面白かったということ、そして中国全土を舞台にした壮大なスケール観、一大スペクタクルが展開される物語に魅了されました。それで何度も繰り返し読んでいるうちに、儒教や道教の奥深さなどにも関心を持つようになって、やがて歴史全般の興味へと繋がったんだと思います。実は今でも三国志物語は持っていて、たまに読んでいるんですよ(笑)。それほど熱中しましたから、大学進学に際しては、まったく迷うことなく史学科を選びましたね。

運命を決めた恩師との出会い

-青山学院大学の史学科を志望されたのはなぜですか

金沢 私は大学の史学科で東洋史や考古学について勉強したいと思っていました。志望校選びをしていた時に、教育関係の仕事をしていた伯父に「東洋史や考古学を学びたいのなら、その分野の第一人者、三上次男先生がいる青山学院大学がいいのでは」と勧められたんです。三上先生は陶磁器の流通に関する東西交流の歴史を、考古学や東洋史の観点から研究していた方で、青山学院大学史学科設立の中心的役割を担った大御所の先生です。そうした先生が熱心に指導してくれるならと思い、青学を志望しました。

-史学科の特徴にはどのようなことがありますか

金沢 私が在学していた当時は、三上先生を中心に先生方が和気あいあいとしていましたね。東洋史や西洋史などの専門分野を超えて、非常に仲が良かったですよ。歴史は、それぞれの専門を究める「縦の歴史」を学ぶことも重要ですが、商業貿易などの東西交流の観点から研究することも大切です。そういった、言わば「横の歴史」を把握できるのは、青学史学科の大きなメリットですね。先生方のつながりが深いぶん、専攻を超えた友だちもできましたよ。

-歴史学の魅力とは何でしょうか

金沢 今こうして私たちが暮らしている現代は、過去からの積み重ねの上に成り立っている社会です。もし過去の状況が異なっていれば、今とは違う社会になっているかもしれません。現在の状態が過去からどのように発展してきたのかを知ることは、これからの未来を見通すことにも繋がっているのではないかと思うんです。例えば貧困や戦争のように、現代社会が抱える矛盾の解答も歴史の中にあるのではないかと。学問という分野を超えて、広く将来の道筋について見渡せる、そういう魅力が歴史学にはありますね。ですから、歴史を学ばないと人類の未来はわからないぞ、という自負も少しありますよ(笑)。

-学芸員とは、どのような仕事をするのか教えてください

金沢 博物館や美術館などのソフト面に関する運営を担当する専門職員として、資料を収集、保存して後世に残すこと。それから研究者として、自らの専門範囲の研究をするという側面もあります。そして、収集した資料や研究成果を元に展覧会を企画して、一般の方々が生涯学習に利用できる場所を提供することが主な仕事です。純粋な研究者でもコレクターでもない、あらゆる分野を扱う仕事と言えます。私は現在、中国「明」の時代における陶磁器の商業流通史を中心に研究しています。自分が大学で学んだことを活かして、なおかつ古代の陶磁器に直接触れることができるのは、とても幸せな仕事だと思いますね。

歴史には生身の人間の暖かさがある

-最後に、史学科を目指す人たちにメッセージをお願いします

金沢 歴史学は、過去の資料が語っていることを導き出すための力を養う学問です。そうして養われた力は、自分自身や社会の現在、そして未来を知る力にもなり、人生において間違いのない判断をくだしていく重要な素質にもなります。さらに、そういったメリットだけではなくて、歴史は本当に楽しい学問なんですよ。過去の歴史は人類の営みそのものですから、歴史がわかると人々の暮らしがわかってくる。人間そのものが対象なのです。学問は突き詰めて学ぶことも必要だとは思いますが、心が踊るようなワクワクする部分も大切です。考古学には探検の面白さがあり、歴史には生身の人間の暖かさがありますから、きっとワクワクできると思いますよ。